Requiem 死者のためのミサ曲(Missa pro defunctis)

 

注)対訳及び注釈は、C-Pro独自の解釈によるものです。研究者、作曲者、指揮者により異なる解釈を持つことが多々あります。あくまで参考資料としてご活用ください。

 

 

1.     Introitus ☆入祭唱☆

死者の永遠の安息への祈り。

 

Requiem aeternam dona eis, Domine,

主よ、彼らに永遠の安息を与えてください。

et lux perpetua luceat eis.

そして絶えることのない光が彼らを照らしますように。

Te decet hymnus, Deus, in Sion,

神よ、あなたにシオンの讃歌はふさわしいものです。

et tibi reddetur votum in Jerusalem.

そしてエルサレムでは、あなたに誓いをささげます。

Exaudi orationem meam

私の祈りを聞き入れてください。

ad te omnis caro veniet.

すべての人の肉体が、神のもとへと戻ることが出来ますように。

 

 

2.     Kyrie ☆憐みの讃歌☆

三位一体を象徴して、神とキリストと聖霊に憐れみを乞う。ギリシャ正教の祈りから転用された文章のため、ここだけはラテン語ではなく、ギリシャ語が使用されている。

 

Kyrie eleison. Christe eleison. Kyrie eleison.

主よ、憐れんでください。キリストよ、顧みてください。主よ、慈悲を与えてください。

 

 

3.    Sequentia ☆続唱☆

13世紀になってから作詞された文章で当初修道士たちが個人的なミサを行うために用いられたため、祈りの対象が「彼ら」ではなく「私」となっているのが特徴。

レクイエムの歌詞に取り入れる際、全体の整合性を持たせるため終曲(Lacrimosa)の最後で「彼ら(死者一般)」に向けての祈りの言葉が加えられた。

 

Dies irae怒りの日)

世界が滅ぶ時、死者が一斉に呼ばれ裁かれる日(最後の審判)が来ることを指す。

 

Dies irae, dies illa solvet saeclum in favilla

その日は怒りの日。この世は破壊され灰となるでしょう、

teste David cum Sibylla.

ダヴィデとシビッラが証言したように。

Quantus tremor est futurus,

人々の恐れはどれほどのものになるのだろうか!

quando judex est venturus,

裁く者がやがて現れる時、

cuncta stricte discusurus.

審判の日に、すべてのことが厳しく裁かれる時に。

 

 

Tuba mirum奇しきラッパの音)

罪を犯さない人間はいない、つまりすべての人間が裁かれる。すべての人間の行い・罪は「生命の書」に記され、だれも言い逃れることは出来ないことを述べる言葉。

 

Tuba mirum spargens sonum

奇なるラッパの響きが

per sepulchra regionum

各地の墓から

coget omnes ante thronum.

すべての者を玉座の前に集めるでしょう。

Mors stupebit et natura

創造物である人間が

cum resurget creatura

裁く者に弁明するために復活するその時、

judicanti responsura.

死も、そして自然も驚くでしょう。

Liber scriptus proferetur

書物がさしだされるでしょう。

in quo totum continetur

すべてのことが書き記され、

unde mundus judicetur.

この世のすべてを裁くための書物が。

Judex ergo cum sedebit

審判者がその座に着く時

quidquid latet, apparebit.

隠されていたことのすべては明らかにされ、

Nil inultum remanebit.

罰せられずに残る者は一人もないのです。

Quid sum miser tunc dicturus?

その時哀れな私は何を言えば良いのでしょう?

Quem patronum rogaturus?

誰に弁護を頼めば良いのでしょう?

Cum vix justus sit securus.

正しい行いをしてきた者ですら安心出来ない、その時に。

 

 

Rex tremendae偉大なる大王)

Rex tremendae majestatis,

恐るべき偉大なる大王、

qui salvandos salvas gratis.

救われるべき人を救ってくださるお方よ。

Salva me, fons pietatis.

慈悲の泉のお方よ、私をお救いください。

 

 

Recordare思い出されよ)

この章は、神ではなくキリストに向けての祈り。キリストがわざわざ地に下り、一度は人間の罪が赦されるよう(せっかく)あれほどの苦しみを受けてくださったのだから、最後の審判でも自分たちの罪が赦されるようにと、懸命に祈る人間の性を表している、もっとも人間的な内容と言える。

 

Recordare Jesu pie,

思い出してください、慈悲深きイエスよ。

quod sum causa tuae viae,

あなたが地に下ったのは私たちのためであるということを。

ne me perdas illa die.

審判の日に、私を滅ぼしませんように!

Quaerens me, sedisti lassus.

私を探してあなたは疲れ、座り込まれました。

Redemisti crucem passus.

十字架に苦しみ、私の罪を贖って下さった。

Tantus labor non sit cassus.

これほどのあなたの辛苦が無駄になりませんように!

Juste judex ultionis,

裁きをもたらす正しき審判者よ!

donum fac remissionis

最後の審判の日の前に

ante diem rationis.

赦しの恩寵をお与えください。

Ingemisco, tamquam reus

私は罪人のように嘆き、

culpa rubet vultus meus.

罪で顔を赤らめます。

Supplicanti parce Deus.

神よ、許しを請う者に慈悲をお与えください。

Qui Mariam absolvisti,

マグダラのマリアを許し、

et latronem exaudisti,

盗賊(マタイ)の願いをもお聞き入れになったあなたは、

mihi quoque spem dedisti

私にも希望を与えられました。

Preces meæ non sunt dignae.

私の祈りなど価値のないものですが、

Sed tu bonus fac benigne

寛大に取り計らってください。

Ne perenni cremer igne.

私が永遠の炎に焼かれないように、

Inter oves locum praesta,

私を羊の群れに置き、

et ab haedis me sequestra,

山羊たちを遠ざけてください。

statuens in parte dextra

私をあなたの右側においてください。

 

 

Confutatis呪われし者)

他の人間が裁きを受けても、自分のことだけは救ってもらえるように祈る言葉となっている。

 

Confutatis maledictis

呪われた者、口を封じられた者たちに

flammis acribus addictis,

激しい火による判決が下された後

voca me cum benedictis

祝福された者と共に、私をお呼び下さい。

Oro supplex et acclinis

私はひざまづき、平伏して希います、

cor contritum quasi cinis

私の心は灰のように砕かれていますが。

gere curam mei finis

私の終いの時にお守り下さい。

 

 

Lacrimosa涙の日)

罪人として裁きを受けたとしても蘇ることが出来るように、と祈る言葉。

 

Lacrimosa dies illa,

その日は涙あふれる日。

qua resurget ex favilla,

燃える灰の中からよみがえるだろう、

judicandus homo reus.

人が罪人として裁かれたとしても。

Huic ergo parce Deus.

その者をお許しください、神よ。

Pie Jesu, dona eis requiem

慈悲深き主イエスよ、彼らに安息を与えてください。

 

 

4.    Offertorium ☆奉献唱☆

キリストへの感謝を示し、パンと葡萄酒を聖壇に捧げるための言葉。

 

Domine Jesu主、イエスよ)

Domine, Jesu Christ, Rex gloriae,

主、イエス・キリストよ、栄光の王よ!

libera animas omnium fidelium defunctorum

全ての死せる信者の心を救いたまえ、

de poenis inferni et de profundo lacu.

地獄の罰と底知れぬ深淵から。

Libera eas de ore leonis,

彼らをライオンの口から救いたまえ。

ne absorbeat eas tartarus,

深淵が彼らを飲み込んでしまいませんように。

ne cadant in obscurum.

彼らが闇の底に落ちてしまいませんように。

Sed signifer sanctus Michael

そうではなく、旗手聖天使ミカエルが

repraesentet eas in lucem sanctam.

聖なる光の道に導いてくださいますように、

Quam olim Abrahae promisisti et semini ejus.

かつて、あなたがアブラハムとその子孫に約束されたように。

 

 

Hostias(いけにえ)

Hostias et preces, tibi, Domine,laudis, offerimus,

主よ、いけにえと祈りをあなたに捧げます。

tu suscipe pro animabus illis.

彼らの魂を受け入れてください

Quarum hodie memoriam facimus.

私たちが今日思いを馳せた人たちの

Fac eas, Domine, de morte transire ad vitam.

死を生へと転じさせてください。

Quam olim Abrahae promisisti et semini ejus

かつて、あなたがアブラハムとその子孫に約束されたように。

 

 

5.    Sanctus ☆聖なるかな☆

Sanctus聖なるかな)

ヨハネの黙示録に残る、天使セラフィムが発したとされる言葉。三位一体の象徴として必ず3回唱えている。

 

Sanctus, Sanctus, Sanctus.

聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな

Dominus Deus Sabaoth.

万軍の主である神よ。

Pleni sunt coeli et terra gloria tua.

あなたの栄光で天と地は満ち溢れます。

Hosanna in excelsis.

いと高きところにホザンナ(万歳・栄光あれ)!

 

 

Benedictusほむべきかな)

キリストがエルサレムに入る時に群衆が歓迎として発した言葉。ホザンナはヘブライ語。

 

Benedictus qui venit in nomine Domini.

主の御名によって来る方(キリスト)に祝福がありますように。

Hosanna in excelsis.

いと高きところにホザンナ(万歳・栄光あれ)!

 

 

6.    Pie Jesu ☆慈悲深いイエス☆

Pie Jesu, Domine. Qui tollis peccata mundi.

世の罪を除いて下さる慈悲深いイエス・キリストよ。

Dona eis requiem sempiternam.

彼らに永遠の安息を与えて下さい。

 

 

7.    Agnus Dei ☆平和の讃歌☆

神の子羊とはキリストのこと(洗礼者ヨハネがキリストを指して言った言葉にちなむ)

通常のミサでは「私たちに平安を(Dona nobis pacem)」と謳われる言葉は、レクイエムでは「彼らに安息を」と変更されている。

 

Agnus Dei, qui tollis peccata mundi.

世の罪を除いて下さる神の子羊よ。

Dona eis requiem sempiternam.

彼らに永遠の安息を与えて下さい。

 

 

8.    Communio ☆聖体拝領唱☆

ミサにおいて、信者がパンを拝領する時に歌われる言葉である。

 

Lux aeterna luceat eis, Domine.

彼らに永遠の光を与えてください、神よ。

Cum sanctis tuis in aeternum quia pius es.

あなたの聖人とともに永遠に、あなたの慈悲により。

Requiem aeternam dona eis, Domine,

主よ、彼らに永遠の安息を与えてください。

et lux perpetua luceat eis.

そして絶えることのない光が彼らの上を照らしますように。

 

 

9.    Absolutio ☆赦祷唱☆

ミサの終了後に歌われる。今一度、最後の審判の恐怖を思い起こし、自分と死者の平安を祈る。

 

Libera me, Domine, de morte æterna,

永遠の死から私をお救い下さい、主よ。

in die illa tremenda.

その恐ろしい日に。

Quando cœli movendi sunt et terra,

天も大地も揺らぎ、

Dum veneris judicare sæculum per ignem.

神が炎をもってこの世を裁こうとするその日。

Tremens factus sum ego et timeo,

私は震え、そして恐れます。

dum discussio venerit atque ventura ira.

裁きと、その後に来る怒り時を。

Dies illa, dies iræ

その日は怒りの日。

Calamitatis et miseriæ,

災禍に打ちひしがれ、

dies magna et amara valde.

大いなる嘆きが訪れる。

 

Requiem aeternam dona eis, Domine,

主よ、彼らに永遠の安息を与えてください。

et lux perpetua luceat eis.

そして絶えることのない光が彼らの上を照らしますように。

 

 

10. In Paradisum ☆天国にて☆

ミサ終了後、出棺の時に歌われる曲。神ではなく、弔われる方に向けて呼びかける言葉となっている。

 

In Paradisum deducant te Angeli;

天使たちがあなたを天国へと導いてくださいますように。

in tuo adventu suscipiant te martyres

そこに着いた時には殉教者たちが迎え入れ、

et perducant te in civitatem sanctam Jerusalem.

聖なるエルサレムの街へと導いてくださいますように。

Chorus Angelorum te suscipiat,

天使たちの合唱があなたを迎えてくださいますように、

et cum Lazaro quondam paupere,

そして、かつては貧しかったラザロと共に

æternam habeas requiem.

永遠の安らぎを持つことが出来ますように。 

 

 

 

*この対訳は、複数の日本語の対訳サイト、複数の英語対訳サイト、日本語及び英語の教会または教会関係者のサイトを参考に、多くを単語ごとにラテン語→英語に訳した上で意味を確認しながら作成したものです。但し、作成者は宗教、歴史の専門家ではないため、完全な解釈に至っていない部分もあります。また、新たな情報や理解を得て対訳や補足説明文を修正することがあります。その場合、修正箇所・履歴の告知は行いません。